6月以降、為替相場ではドル相場の軟調地合いが続いているが、欧州中央銀行(ECB)について興味深い報道が散見される。
ロイターは9日、ECB関係筋の話として、ECBがユーロ安を目的として利下げに踏み切る可能性を検討していると報じた。これによれば、(ECBの政策当局者とされる)関係筋の1人が「利下げの理由は5つある」とし「為替相場」と5回繰り返したという。同じ関係筋は、1ユーロ=1.15ドルは許容可能としながらも1.20ドルは注視すべき重要水準と述べたとされる。
この政策当局者がどのようなポジション(正副総裁、理事、各国中銀総裁、単なるECBスタッフなど)にあるのかは定かではないが、えてしてユーロ高に神経質な発言をするのは南欧の政策当局者であることが多い。邪推を承知で言えば、景気後退すれすれの成長率を強いられているイタリアの当局者などはユーロ安を欲している可能性が高そうな印象がある。
この点、同じ9日にビスコ・イタリア中銀総裁がブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じ「予想通り事が進まなければ、われわれが行動することは疑いがない」と述べたことが報じられている。これが偶然なのか筆者は非常に気になった。
ちなみに、これらの報道を援護射撃するかのようなECB高官の発言がその後相次いでいる。ブルームバーグによれば、11日には元欧州委員で次期ECB総裁候補ともされるレーン・フィンランド中銀総裁が「政策理事会は行動すると決意しており、必要に応じてすべての政策手段を調整する用意がある」と発言している。
さらに12日にはビルロワドガロー・フランス中銀総裁がフランスのテレビ局に対し「現在の景気減速がブレーキを強く踏むことになれば、現在している以上の行動を取ることが可能だ」と述べ、同じくフランス人でこちらも次期ECB総裁候補として名前が挙がるクーレECB理事が「インフレ率がECBの目標へと持続的に向かうことを確実にするよう、政策理事会は不測の事態に行動することを決意しており、必要に応じてあらゆる手段で調整する用意ができている」と緩和をほのめかしている。