マカオにシンガポール、韓国と、海外のきらびやかなカジノの建物を背景に笑顔をたたえる若者たち。単なる旅行好きのキラキラサークルと侮るなかれ。彼らは、日本の未来を見据え、志を掲げる学生団体「東大IR研究会」のメンバーだ。カジノ産業と若者の関わりを探るシリーズ企画の第4弾は、IR(統合型リゾート)に日本経済を救う産業としての可能性を見いだし、若者視点で同世代へIRの周知活動を行う学生たちにスポットを当てる。(清談社 松嶋千春)
IRは「地域の観光資源」
周知活動に勤しむ若者たち
東大IR研究会の前身は、2015年にカジノゲーム好きのメンバーが集まってスタートした『東大カジノ研究会』。東大を中心に首都圏の大学生から構成されるインカレ団体だ。
2018年の世代交代を機に、カジノだけでなくIRの魅力発信にさらに注力することを決め、『東大IR研究会』の名に変更したという。同会は、IRを「これからの日本を先導する重要な観光資源」と定義づける。
「日本版IRの基本方針では、カジノの面積はIR全体の3%を上限とし、残りの97%はほかの施設で構成されることになっています。カジノというミクロの点だけが取り上げられがちな状況のなか、まずIRがどんなものなのか、誤解のないように知ってもらうことが重要です。そのためにIR議連の衆議院議員やIR事業者を招いて講演会を開いたり、SNSでIRの説明動画を発信したりするなど、周知活動に力を入れています」(慶應義塾大学 市村くん)
多くの人は、“IR”と聞いてもどんな施設なのか想像しにくいだろう。シンガポールのホテル『マリーナ・ベイ・サンズ』は屋上の船型プールが有名で、ホテル単体で“リゾート”というイメージが付いているかもしれない。しかし、ホテル周辺にはカジノや展示場といった多くの施設が存在する。それらは利用者の動線や利便性などが綿密に計算されて配置され、全体がそろって初めて完成される統合型リゾートなのだ。
「IRを活用することで、IRの施設だけでなく周辺地域の観光資源に触れる機会が生まれますが、その点はなかなかフォーカスされません。日本版IRの成功には、このIRを基点とした地域一体型観光に、ひとりでも多くの人が主体的に参加していく必要があると考えています」(市村くん)