麻生大臣に逆転の秘策あり!?

 前述のように、筆者は前回の連載原稿で麻生大臣の対応を批判した。原稿のタイトルは「炎上する『老後2000万円』報告書問題、最悪なのは麻生大臣だ」なのだが、現時点ではこの論旨と結論に1ミリの変化もない。

 しかし、ものにはさまざまな考え方がある。麻生大臣の立場に立って、これから彼がどうしたいいのかを考えてみたら、「いいこと」を思いついた。

 撤回を求めた報告書に関して、自分の撤回の指示を撤回するのだ。

「俺はねえ、あの報告書をじっくり読んでみたんだ。するとだねぇ、よく読むとそんなに悪いことが書いてあるわけじゃねぇし、それなりに参考になるんじゃないかってぇことも書いてある。皆さんも、一度じっくり読んでみてはいかがなものだろうか」

「一度は受け取りを拒否しようと思ったんだが、このたび方針を改めて正式な報告として受け取ることにいたしました」

 そうとでも言ってみるといい。「撤回の撤回作戦」だ。

「報告書をよく読んでくださいね」と毎回一言付け加えて丁寧に正しく質問に答えるなら、野党は全く攻めあぐねるだろう。また、報告書の内容に対して実は筋違いの苦言を呈した自民党の二階俊博幹事長や連立相手の公明党の山口那津男代表との立場も逆転するのではないか。

 何よりも、これだけ注目を引きつけてから、「報告書をよく読んでください」と訴えるのだから、その広報効果は絶大だ。

「わが国における資産形成の普及にあって、麻生太郎氏ほど大きな役割を果たした人物はいない。あれはすごい作戦だった…」と後に振り返られることになるだろう。実際のところ、今の段階でも、良し悪しは別として、彼の対応が原因でこれまでにない数の国民が老後の資産形成に関心を持つようになった。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)