報告書の内容自体は真っ当
揚げ足取りの馬鹿騒ぎは意味がない

 3つ目の勘違いは、このデータが「平均値」であるということを理解していないことだ。一般的に、統計データにおける「平均値」は、一部の極端な数値に引きずられてゆがんでしまう傾向がある。例えば、前述の総務省統計局が2019年5月17日に出した「二人以上の勤労者世帯が保有する貯蓄額」のデータでも、2018年時点での平均値は1320万円だが、中央値で見ると798万円となっている。中央値とは一番多い人と一番少ない人のちょうど真ん中にいる人の数値であるから、こちらのほうがむしろ平均的な位置にいると考えるべきだろう。

 実際に今回の金融庁の報告書の支出項目には、いくつもの不可解な数字が出てくる。例えば支出に占める食費の割合は27.4%で、その金額は6万4000円あまりとなっている。知り合いのFPの人何人かに聞いてみても、この金額は普通の高齢無職世帯としては高すぎるという意見だ。また通信費も2万7000円あまりとなっているが、夫婦2人でスマホを使ったとしても、もう少し金額は少ないのが普通ではないだろうか。

 もちろん中にはそういう生活をする人もいるだろうが、重要なことは支出の中身や考え方は人によって異なるため、一概には言えないということなのだ。そして、それは報告書の中にもきちんと書いてある。

 にもかかわらず、この平均値が全ての人に当てはまるかのように絶対視し、2000万円という金額のみを取り上げるという報道姿勢にはいささかあきれ返るし、それに対して自分で考えることなくひたすら騒いでいるだけという人たちも困ったものだと思う。

 繰り返すが、今回の報告書は実に真っ当なものである。今後我々が高齢化社会で考えて進むべき方向、そして金融機関として対応しなければならないことが示唆されている。これをきちんと踏まえて対応するか、何も考えずに騒いでいるだけかは、将来大きな差が生じてくるに違いないであろう。

(経済コラムニスト 大江英樹)