親に「仕返し」をする前に

幡野 でもね、がん患者にかぎった話ではないんですが、明らかにひどい親を持つ人に「縁を切ったら?」と言うと彼らは一様に親をかばうんです。守ろうとする。「ひどい親だけど、全部が全部悪いわけじゃない」って。

古賀 ああー、わかる気がします。

幡野 いまはまだ、自分自身が20代~30代で若いから、それで済みます。でも、親の介護話が出る年齢になってくるとそうも言っていられなくなる。親が介護される状態に入ったとき、抑えつけられていた子どもが復讐してしまうことは少なくないんですよ。

古賀 親に「仕返し」してしまう?

幡野 そう。でも、仕返ししてスッキリするかというとそうじゃない。そんなことをした自分に、深く落ち込んでしまう。よりいっそうこころを蝕ばまれていきます。ぼくは、わざわざそんなつらい思いをしてほしくない。だからそうなる前に離れたほうがいい、選びなおしたほうがいいと思っているんです。

古賀 介護は「親=強者」と「子ども=弱者」の立場が逆転しますからね。自分がより傷つく前に逃げる、という選択肢を持つのは大事かもしれません。これ、「選びなおすなんて、幡野さんみたいに強い人だからできるんだ」とは思ってほしくないですよね。末期がんだからできるんだ、とも。

幡野 しれっとね、できるんですよ。

古賀 しれっと(笑)。

幡野 ただ選べないと思い込んだり、思い込まされちゃったり。みんな、まじめなんでしょう。社会的な常識や「親を大事に」「育ててくれた恩」といった言葉で苦しめられちゃう。

古賀 そうですね。まさに「けしからん」みたいな。

幡野 ぼくは、社会的にはふまじめなほう。親不孝ものなんです。まあ、まじめな人は自分が病気になったら親への感謝を綴るでしょうけど、「選びなおす」本を書くくらいですから(笑)。

 でも、自分が生きにくいと感じたら自分で選びなおさないと、ずっと苦しいままです。子がどの親から生まれるかを選べないのは仕方ありませんが、選べなかったものを選びつづける必要ないと思います。

(つづく)