これからサプライズ(野党の不信任案に対して「私からも野党の皆さんに不信任を申し上げる」などと言って解散するとか、G20の政策協調を理由に消費税率引き上げを見送るとか)を用意している可能性が全くゼロになったわけではないが、現段階で安倍政権の戦略的意図が奈辺にあるのか測りかねる。

 世論調査を見ると、当然ながら、報告書問題に対する政府の対応に納得しないという反応が多いし、消費税率引き上げにも反対の意見の方が多い。しかし、今のところ、こうした政権への批判が野党の支持率アップにつながっていない。一言で言うと、野党が弱すぎて盛り上がっていない状況だ。

 それにしても政権側が無策だ。政権が長期化して、与党が「安倍疲れ」しているかのようである。

「年金」は争点になり得るか

 野党は、「老後2000万円報告書」の問題に絡めて、年金を争点としたいようだが、年金は参議院選挙の争点になり得るか。

 もちろん、年金は国民生活にとって重要な問題であり、制度改正は国会で決められるのが当然だ。年金制度の何らかの改正が、国政選挙で問われることはあっておかしくない。

 しかし、年金制度の改正には、(1)国民の利害損得が絡むこと(利害調整)と、(2)制度が複雑で変更の実現性や影響を理解・検証することが難しいこと(技術的複雑性)が根底にあるので、「選挙の際の争点にはなじまない」との意見もある。

 たとえば制度の検討が超党派で行われて、基本的な認識を共通化した上で各党が特色を出すようなかたちで民意を問うようなプロセスが良さそうだ。

 さて、「100年安心」は、もともと年金財政の持続性を指すもので、個々の国民が年金だけで老後を暮らせることを保証するものではない。この点をあえて混同させたまま政府を追及している野党に対して、知的な国民は共感を持たないだろう。

 しかし、安倍首相は「100年安心」を前回の財政検証における所得代替率に関連付けて説明してしまったので(下手な方向に関心を向けた。政治的には答弁ミスだろう)、野党側にはこの点の攻め口が一応はある。将来の所得代替率試算は、前回検証時よりも悪化している公算が大きいからだ。