世界的に多大な影響を与え、数千年に渡って今なお読み継がれている古典的名著たち。そこには、現代の悩みや疑問にも通ずる、普遍的な答えが記されています。しかし、そのような本はとんでもなく難解で、一冊しっかりと理解するには何年もかかるものもあります。本連載では『読破できない難解な本がわかる本』(富増章成著)から、それらの難解な名著のエッセンスを極めてわかりやすくお伝えしていきます。(イラスト:大野文彰)
まさに本のコラージュ作品?
『グーテンベルクの銀河系―活字人間の形成』は、引用の多い本です。また、見出しがキャッチコピー的で、それを読むだけでも楽しめるでしょう。「アルファベットは文化の、攻撃的にして戦闘的な吸収・変容機だ」というような刺激的な見出しが連発します。
マクルーハンは、人類がもともと声でコミュニケーションしていた時期から、文字や記号に移していった過程を様々な引用をつうじて説明します。
「地中海文化の初期の書き物は絵もしくは記号化されたロゴグラム(語標)によって行われた。つまり、単純な絵が事物や、さらに連想によって観念、行為、名前などを表わしていた」(同書)
さらに、古代ギリシアや古代ローマでは、ロゴグラムはアルファベットに進化し、この文字は一連の表音文字となりました。表音文字によって対象世界は文字として見える構文をもちます。
「古代および中世においては、読書といえば音読と決まっていた」「息をじゅうぶんに吸って発声し、耳で聴きながら読んでほしい。これがわたしが読んでもらいたいやり方なのであり、こうしてはじめてわたしの詩はさまになるのだ」(同書)
中世文化は朗読法と吟遊詩人が主流でした。けれども、情報量の増大によって、知識の視覚による組織化が刺激されて、遠近法的な視座が生まれます。これは「絵画技術史上の大事件」「幾何学史における大事件」だとされます。ところがもっとすごかったのが活版印刷の出現だったのです。