世界的に多大な影響を与え、数千年に渡って今なお読み継がれている古典的名著たち。そこには、現代の悩みや疑問にも通ずる、普遍的な答えが記されています。しかし、そのような本はとんでもなく難解で、一冊しっかりと理解するには何年もかかるものもあります。本連載では『読破できない難解な本がわかる本』(富増章成著)から、それらの難解な名著のエッセンスを極めてわかりやすくお伝えしていきます。(イラスト:大野文彰)
これからの世界経済はどうなる?
ピケティの『21世紀の資本』は緻密なデータをもとに、世界に広がる経済格差とその対策について説かれた本です。ピケティによると、産業革命以来、欧米はアジアとアフリカに対して、圧倒的に強い経済力を誇ってきました。
けれども、現在では、アジアとアフリカの経済成長が急速に進んでおり、地域間の格差は縮まりつつあるとされます。1820年頃は産業革命によって欧米では国民一人あたりの生産性が格段に上がりました。
今となっては、先進国のGDPの成長率のピーク期は終わり、21世紀末にはさらに下がるとされます。これには、人口減少という要因も拍車をかけます。私たちが危惧する日本が少子高齢化で国力が弱くなるという事態もこれに関連します。
全体の経済成長が停滞すると、貧しい人々が増えます。1975年以降、富裕国では、国民所得に占める資本所得の比率が上昇しているとされます。資本とは不動産や株のことなどで、資本から得る所得が資本所得です。
富裕国であるアメリカ、ドイツ、イギリス、カナダ、日本、フランス、イタリア、オーストラリアの各国の資本所得の推移によると、国民所得に占める資本所得の比率が増加しているのです。
ところで、『21世紀の資本』では、膨大なデータを分析した結果、「資本収益率(r)はつねに経済成長率(g)より大きいという不等式が成り立つ」と主張されます(r>g)。これはどういう意味なのでしょうか。