世界的に多大な影響を与え、数千年に渡って今なお読み継がれている古典的名著たち。そこには、現代の悩みや疑問にも通ずる、普遍的な答えが記されています。しかし、そのような本はとんでもなく難解で、一冊しっかりと理解するには何年もかかるものもあります。本連載では『読破できない難解な本がわかる本』(富増章成著)から、それらの難解な名著のエッセンスを極めてわかりやすくお伝えしていきます。(イラスト:大野文彰)
日常生活の中から精神の秘密がわかる
『精神分析入門』は、フロイトが、1915年から1917年にかけてウィーン大学で一般向けに講義を行った講義録をまとめた著作です。まさに入門としてわかりやすい内容となっています。
入り口が「錯誤行為」(言い間違いなど)です。たとえば、ある人が「今から開会します」と言うべきところを「今から閉会します」と言い間違えることなどです。この現象を説明するためにフロイトは心理における葛藤のモデルを用いて錯誤の原因を明らかにしようとしました。本人は「開会」したくなかったのですが、そこに葛藤があり、思わず「閉会」と言ってしまったというわけです。
フロイトは続いて夢について分析を行います。夢は様々な刺激から、睡眠を守っているとされます。たとえば、現実の世界で騒音がしても、夢の中での出来事の騒音であれば、目が覚めません。
また、夢のストーリーは目覚めたあとに直されていて(夢の二次加工)、実は本人が目を覚ましてから思い出した夢と、本当に見ていた夢とは違うということ。夢は願望の充足で生じ、子どもの夢よりも大人の夢のほうが複雑であることなどが説明されます。
夢は、凝縮・移動・視覚化など変形することが多く、これが夢が象徴的となっている理由です。たとえば、家は「人間の体」、平らな壁の家は「男性」、バルコニーのある家は「女性」、小動物などは「子どもや兄弟姉妹」、旅行などは「死」というように、夢に出てくる物がなにかの象徴をもっているというのです。