前のめりになる三井物産社長の思い

 三井物産にすれば、ノバテクもティムチェンコ氏についても、大きなリスクがあるのは重々承知の上での判断だ。なぜ、そこまでしてアーク2に賭けたのか。

「サハリンで苦労した安永さんは、ロシアにはよほどの思い入れがある」と三井物産関係者は明かす。

 サハリンとは、ロシアの国営ガス会社であるガスプロムが極東で手掛け、物産も参画したLNGプロジェクト「サハリン2」を指す。安永社長は、このサハリン2の事業立ち上げや最終投資決定に携わっていた。

 2007年、パイプライン建設をめぐる環境問題をきっかけに、三井物産は上流権益をガスプロムに譲渡せざるを得なくなった。

 だからこそ、安永社長には前のめりになってでも、ロシアのプロジェクトを成功させたい思いがあるという。

 三井物産はこれまで世界のLNGビジネスを牽引してきた。アーク2に参画することはそのプレゼンスを示す絶好のチャンスでもあり、需要が縮小する日本以外でLNG市場を開拓する物産の戦略に合致する。

 物産関係者によれば、アーク2で生産されたLNGの多くは欧州やアジア市場に向かうとされ、物産が二つの市場にさらに食い込むきっかけになるという。

 トップ自らが賭けたプロジェクトは果たして吉と出るか、凶と出るか。

訂正 記事初出時より、以下のように表現を改めさせていただきました。1)第3段落:出資する意思をトップ自ら示すためだった。→出資判断の期限が迫っていた。 2)第6段落:極めて政治色が濃い。→極めて政治色が濃いと業界関係者は見ている。 3)第21段落:ロシア情勢に詳しい塩原俊彦・高知大学准教授は、三井物産がアーク2への出資を決めたことに対し、「米国の経済制裁対象になっている企業、あのティムチェンコが絡むプロジェクトによくもまあ、出資した。勇気ある行動」と皮肉る。→削除 4)第23段落:ノバテクもティムチェンコについても→ノバテクもティムチェンコ氏についても 5)第26段落:安永社長は当時、この対応にも当たっていて「非常に悔しがっていた」(物産関係者)。→削除 6)第29段落:多くは欧州市場に向かうとされ、物産が欧州にさらに食い込むきっかけになるという。→多くは欧州やアジア市場に向かうとされ、物産が二つの市場にさらに食い込むきっかけになるという。(2019年7月5日 12:20 ダイヤモンド編集部)