中国企業への売却が破談になった東芝の“負の遺産”、液化天然ガス(LNG)事業を仏石油メジャーのトタールが引き取ることが決まった。破談から2ヵ月あまりのスピード決着は、米中貿易戦争が追い風に働いた。
トタールのLNG戦略にちょうどはまった
東芝は6月1日、同社が保有する米国テキサス州のLNGプロジェクト「フリーポート」をトタールに売却すると発表した。もともと中国の民間ガス大手ENNグループに譲渡予定だったが、4月にENN側が契約解除を要求し破談。東芝は譲渡先を再募集していた。
同事業は最大1兆円の損失に膨らむ可能性があったため、ENNに930億円を払って引き取ってもらうことになっていた。破談後の新たな売却候補先探しは、業界関係者の間で「もっと悪い条件を飲まされるだろう」「失敗すれば、車谷暢昭会長のクビが飛ぶかもしれない」ともささやかれていた。
ふたを開けてみれば、譲渡条件は昨年11月にENNと合意した時と全く同じだった。意外な結果には、二つ事情があった。
一つ目は、急速なLNG拡大戦略に走るトタールは新規プロジェクトを増やしており、新規のリスクに比べれば東芝の事業は見通しが立ちやすいと判断されたことだ。