生活保護のリアル生活困窮者がもしも貧困ビジネスの寮に身を寄せてしまったら、生活保護費の大半を本人が使えない日々が始まる(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「貧困ビジネス」の規制は
誰を規制しようとしているのか

 生活保護で暮らす人々は、生活保護費の範囲で経済生活を営む。生活保護費は「相対的貧困」の上限となる「貧困線」よりは下のラインに設定されている。したがって、生活保護で暮らしているということは、貧困状態にあるということだ。そこに「住宅弱者」というハンデが重なると、複合した「貧」と「困」が、さらに苦しい状況をもたらす。その人々を収入源としているのが、いわゆる「貧困ビジネス」だ。

 刑務所入所歴、路上生活歴、障害、高齢といったハンデキャップ、および何らかの社会生活の困難を抱えている人々は、通常のアパートに入居することが困難だ。大家さんと地域の理解、さらに何らかの支援があれば可能かもしれないが、少なくとも容易ではない。本来、解消されるべき社会課題は、「地域での普通の暮らしを全員が保障されるわけではない」という日本の現状だ。

 したがって、その人々は定住先が見つかるまで、仮の行き場で毎日を送ることとなる。表面的には「本人が選んだ」ということになっているかもしれない。しかし、福祉事務所のケースワーカーに「ここしかないですよ」と言われたら、少なくともその晩は、「自分の意思で」そこに行き、一夜を過ごすことになるだろう。

 そこがいわゆる「貧困ビジネス」の寮である場合、生活保護費の大半を本人が使えない日々の始まりとなる。本人の手元に残るのは、最良でも2万円程度であることが多い。本人に提供される「住」や「食」は、極めて粗略なものであり、費用に見合うものではない。だから、利益が発生する。

 貧困ビジネス業者の利害は、一部の福祉事務所とも一致する。担当している世帯が、地域の中にバラバラに住んでいるのではなく、貧困ビジネスの寮で暮らしていることは、訪問調査など生活保護業務を省力化して、「費用対効果」を高めるのに有効だからだ。しかし生活保護制度は、まず対象となる本人のためにある。貧困ビジネスに利益をもたらすためにあるわけではない。