世界的な景気減速の要因
在庫調整、中国景気、米中貿易戦争

 世界的な景気減速をもたらしている要因の1つは、循環的なものによる。足元で、米国を含む多くの国は軽度の在庫調整下にあり、主に生産活動に抑制圧力が働いている。雇用や個人消費が比較的堅調な一方で、生産活動が減速傾向を辿っている国が多いのは、在庫調整によるものと判断される。

 世界的な景気減速の別要因は、中国景気の減速と米中貿易戦争である。過剰債務や不良債権、過剰設備の圧縮・整理を押し進めた結果、中国の内需に強い抑制圧力が働いた。これに、米中貿易戦争による輸出の減速が加わった。輸出の減速は、世界的な景気減速の影響も受けており、中国のPMI輸出受注判断DIは、判断基準の分かれ目となる50ポイントを13ヵ月連続で下回っており、輸出の下振れ傾向がさらに続く可能性が高いことを示唆している。

米中貿易交渉は
依然として市場の重石

 20ヵ国・地域(G20)首脳会談(サミット)の際に行われた米中首脳会談では、頓挫していた米中貿易交渉が再開される運びとなった。市場はこれを好感したが、この1年で引き上げられてきたお互いの関税が引き下げられるわけではなく、経済への影響は変わりがない。また交渉再開が、米中双方の歩み寄りを示すわけでもない。米中交渉の進展が困難であることが露呈してくれば、市場の動きは再び不安定化してこよう。

 市場がファンダメンタルズ以外の要因に揺さぶられ、それが企業や消費者のマインドの悪化などを通じてファンダメンタルズの悪化要因となるリスクまで考えれば、中央銀行にとっても、米中問題に揺れる市場の動きを看過できなくなる。米国のみならず、利下げ余地が乏しいはずの欧州中央銀行(ECB)や日本銀行が、景気失速までは懸念されていない段階で利下げ余地があるとわざわざ言及するのは、市場の期待を高めることで不透明な米中関係に伴う市場の動揺リスクを軽減しようとの狙いがある、と見ることができる。