復旧工事や除染で稼いだ軍資金
買収先は全て「後継者難」
2019年に人手不足倒産が年間で過去最多になる可能性が高まってきた。東京商工リサーチによると、19年上半期(1~6月)の「人手不足」関連倒産は191件に上り、集計を開始した13年以降で上半期最多を記録した18年の185件を上回った。産業別で最も多いのはサービス業他(63件)、次いで建設業(33件)だ。
要因の内訳(後継者難、求人難、従業員退職、人件費高騰)を見ると、代表者や幹部役員の死亡、病気入院、引退などによる「後継者難」が109件で全体の6割弱を占めた。企業経営で後継者不在がますます深刻になっていく中、後継者難の企業を大量に買収する買い手が現れた。
福島県の建設会社である小野工業所は、11年に発生した東日本大震災に伴う復旧工事や除染で稼いだ金を軍資金として、15年以降に9件もの買収を重ねた。買収した会社は全て後継者難に陥っていた。売却した側のオーナーの年齢(当時)は、一番高くて84歳。後を継ぐ者が親族にいないため、50代で早めに譲渡を決意した経営者もいた。
小野工業所がM&A(企業の合併・買収)を仕掛けるきっかけは復興特需下の人手不足、材料不足だった。6代目の小野晃良社長は供給力不足に直面して「これは一過性で終わるのか」と自問。「建設業は不況になることが多く、過去の体験から次の不況に備えようとするが、それでは次にやって来る大量離職、大量廃業の時代を乗り切ることはできない」と考えた。