後継社長は内部昇格か
それでも解けない警戒

 もはや“勝負あった”に見えるが、アスクル側の不満は収まらない。岩田社長が捨て身の記者会見で訴えた2つの上場会社の間の利益相反の問題はくすぶり続け、同社長解任後のヤフーとアスクルの関係に火種を残しそうだ。

退任が必至のアクスルの岩田社長が訴えたのは「上場会社の利益相反」。記者会見には、後継候補の吉田・吉岡の両最高執行責任者(COO)も並んだ Photo by Reiji Murai

 岩田社長の「乗っ取り」発言に対し、ヤフーは「ロハコ事業の譲渡を申し入れる方針はない」と同事業の切り離しを否定している。ロハコの切り離しが持論のプラスと足並みを揃えて岩田社長の再任に反対するものの、「ロハコはアスクルが運営するのが最良」との判断に傾いた。

 ヤフーは、岩田社長の再任に反対するものの「新社長を派遣する考えはない」との方針も表明した。新社長は、アスクルの新しい取締役会が決めればよいとの立場で、最高執行責任者(COO)を共に務める現取締役の吉田仁氏、吉岡晃氏のいずれかが昇格することになりそうだ。

 いずれも岩田社長の記者会見に反応したコメントで、ヤフーとしては、事業も会社も“乗っ取る”考えはない、との立場を慌てて表明した格好だ。

 もっとも、アスクルが反発しているのは、同社の社外取締役らで構成する指名・報酬委員会の取締役選任案を覆して、ヤフーが社長に退任を迫ったことにある。「上場企業の独立性とガバナンスを踏みにじった」というアスクルからの批判に対し、ヤフーは答えを示していない。このままでは仮に次の社長がアスクル内部から昇格しても、いつでも資本の力で解任できるというフリーハンドを与えたに等しい。

 ヤフーによる社長退陣要求でアスクルが最も問題視しているのは、ヤフーとアスクルの資本・業務提携の契約に違反している疑いがあることだ。契約には、「アスクルとロハコの独立性を担保する」との条文があり、アスクルの取締役選任は同社の指名・報酬委員会の決定を尊重すると明記されている。この契約に著しい違反があった場合は、ヤフーの保有株の買い戻し請求をする権利があり、アスクルは最後の手段として、この権利行使を検討していることを明らかにしている。

 つまり、岩田社長だけを“切った”としても、内部昇格した後継者が資本提携解消の方針を継続すれば両社の対立は終わらない。ヤフーの社長交代要求が契約違反に該当するかどうかは法廷闘争にもつれ込む可能性があり、そうなれば対立は長期化する。