タレントの多くは、大手事務所に所属しなければ事実上、タレント活動ができない。いくら宮迫さんら芸人側に非があるとはいえ、追い込まれた立場の芸人たちに事務所のトップが「連帯責任でクビにする」などと口走ることは、コミュニケーション以前の問題である。

 事務所側と所属芸人の力関係をあらわにした岡本社長が、自らの言動を「意思疎通」「コミュニケーション」の問題にすり替えることは、不祥事を起こし、力関係を同様にすり替えてきたトップの言動に似る。

 もちろん、反社から金銭を受け取ったお笑い芸人は、不公平な契約に耐えかねたコンビニ加盟店とは事情が異なる。7月21日に生放送されたフジテレビの情報番組「ワイドナショー」で、司会の松本さんが、一連の問題に関して吉本の経営陣の対応を批判し、岡本社長に直談判して22日の記者会見の開催を求めた行動を称賛する向きもある。

 だが、いくら吉本経営陣の対応に問題があったとはいえ、芸人が反社から金銭を受け取ったこと自体が帳消しになるわけではない。ましてや宮迫さんや田村さんは、年齢が50歳に近く長いキャリアを持つ超売れっ子だ。

 それでも、SNSが発達した現在、組織に対して個人が声を上げることへの共感は広がっている。大企業にせよ有力芸能事務所にせよ、閉鎖的な環境で“王者”のごとく振る舞ってきた企業は、そうした戦略の再考を迫られている。

 国も、こうした動きを無視できない。経済産業省や公正取引委員会は、コンビニ本部の加盟店に対する姿勢や契約内容について、改善に向けて動き出した。また公取は、国民的男性アイドルグループを擁するジャニーズ事務所に対しても、民放テレビ局にタレント出演をめぐって圧力があったとして注意を行った。業界を問わず“昔ながら”の常識は通用しなくなりつつある。