ギャラをもらっていないと言っていた宮迫さんらが、嘘でしたと白状して、一日も早く謝罪会見ですべてを洗いざらいぶちまけて世間に詫びたいと訴えてきた。さて、あなたは「よっしゃ、すぐやろう」となるだろうか。

 なるわけがない。

 会見を開いて、宮迫さんたちにこれまでの経緯をすべて語らせてしまったら、そもそもの発端が、「吉本興業が反社系イベントにタレントを派遣したことでした」という事実がバレる。そうなると、カラテカの入江さんにすべての「罪」を押し付けて「芸能界追放」したこととの、整合性が取れなくなる。また、先ほどのような芸人たちの「処分」の根拠も揺らぐ。

 つまり、会見を開くことは、「芸人の闇営業」という個人の罪から、「反社系イベントに関わった吉本」という組織全体に拡大させることになってしまうのだ。

企業の浄化よりも
経営陣の保身を優先

 吉本の社員数は865人、契約をする芸人は6000人もいる。それだけの数の人たちと、その家族の生活を守る責任がある社長からすれば、この被害拡大を防ぐように動こうと考えるのは、ある意味当然だ。ダメージを最小限に抑えるため、世間の関心が薄れるまで「静観」して、どうにか会見をせずフェードアウトできる道はないかと模索するのも、よくわかる。

 しかし、宮迫さんたちは早くぶちまけさせてくれと訴える。イラっとしたことだろう。自分勝手なことを言うなと怒りを覚えたかもしれない。それが、「会見を開いてもいいけど、開いたら連帯責任で全員クビ」という発言に繋がったのではないか。

 もちろん、これはすべて筆者の想像に過ぎない。が、不祥事企業の謝罪会見の対応をしてきた立場で言わせていただくと、こういう「ジレンマ」に陥って謝罪会見を開かない、内部告発者の口を封じるというケースはよくあるのだ。

 1人の従業員が不正をした。じゃあ、それを公表しようとなって調べたところ、1人どころではなく、何十人も関わっていて、組織内で何十年もずっと黙認されていた。これを発表したら経営責任になることは間違いない。事業もダメージを受ける。組織もガタガタと崩壊してしまう。

 なんてジレンマに悩むうちに、早く事実を公表すべきと言う人間が1人消え、2人消え、「まだ他にも問題が発覚するので公表すべき時期ではない」とか「全体像が明らかになってから会見を開くべきだ」と、もっともらしいことを言う人の声が大きくなり、気がつけば組織全体で「隠蔽」へ流れていく、というのが不祥事企業の”お約束”なのだ。

 ここまで出ている情報を整理する限り、吉本興業もその「王道」を突き進んでいるようにしか見えない。

 ただ、吉本が普通の不祥事企業と異なるのは、前述したように「テレビ局が株主」ということだ。「加藤の乱」に注目が集まる中で、今後、「バイキング」のような論調はさらに増えていくだろう。

 テレビ局から、次はどんな「吉本ファースト」の擁護論が飛び出してくるのか。日本最大の芸能事務所の「情報戦」に注目したい。