かつて決算の大幅下方修正と過年度修正を行って世間から批判を浴びたIHI。だが、発覚直後から内部統制の強化に乗り出し、財務体質の改善は一定の成果を上げている。その後の課題に迫った。
長らく、低迷が続いたIHIには、“オリンピックみたいな会社”という形容が付いて回った。
その理由は、「4年に1回、多額の赤字を出す」からで、そもそも総合重機メーカーは毎期の業績の振れ幅が大きいという事業特性を抜きにしても、IHIは周期的に赤字を出してきた。
例えば、IHIで主力の航空機のエンジン事業を例に取ると、こうなる。新型のエンジンを開発・製造して顧客に引き渡してから、25~30年かけて投下資本を回収する。量産体制に入るまでに数年間かかり、その後も損失を出し続ける。累積損失を解消し、やっと儲けが出始めるのが、約10年後という息の長いビジネスなのだ。
他の産業と比べて、巨額の設備投資と技術力の蓄積が必須であり、「ある事業で赤字を出しても別の事業で補える体力がなければ総合重機メーカーとして成り立たないので、新規参入の壁は高い。したがって、重機メーカーの数は限られる」(山田剛志・経営企画部総合企画グループ担当部長)。
三菱重工業、川崎重工業、IHIの業績を比較すると、総合重機メーカーという業態の特性が把握できる。連結売上高に占める営業利益率は、三菱重工が4.0%、川崎重工が4.4%、IHIが3.5%と、売り上げ規模の割には低い。一方で、国内の需要が伸び悩んでいることから、年度によって案件の受注状況に振れ幅はあるが、売上高に占める海外比率は増加傾向にある(図(1))。