年齢は関係ない、人生やりたいことをやらなければ悔いが残る

 このような起業小国かつ早期リタイアメント大国フランスでのシニア起業家ジェロームとジョーンズは、まさに規格外だ。

 実は、ジェロームは、若いころから音づくりに魅了されていたという。その夢を追うため、2015年秋(51歳時)にエールフランスを退職、Voxline社を立ち上げた。2016年には、これに新たな挑戦機会を求めていたジョーンズ(当時59歳)が加わり、2017年6月に最初のプロトタイプが完成した。

 このように、本格的に活動がスタートして2年しか経っていない。

 ジェロームに、安定した大企業でのサラリーマン生活に未練はなかったのかと尋ねると「クリエイティブでいる時が一番楽しい。飛行機のパイロットを続けていればそれができない。やりたいことをやらずにいる方が悔いが残る人生だ」と答えが返ってきた。ジョーンズに、60歳を超えての新たな挑戦に躊躇はなかったと尋ねると「年とか関係ない。人生100年時代、60を超えても打ち込みたいことを続けられる自分は幸せだ」という答えが返ってきた。

 さらに彼らは、自らを振り返り、若手よりもシニア起業家の強みは多いと口をそろえて言う。例えば、本当に自分がやりたいことが何なのかが明確、豊富な経験や人脈、強い責任感、緊急時の対応力、我慢強さなどだ。

過去・現在・未来へ

 彼らの音創りの原点は、過去の幻の技術にあるという。1927年に世間から見捨てられたある特許技術で、弦楽器のような新タイプのスピーカーを創ろうというものだ。

 既存のスピーカーが採用する点音源(1つの音源から音を伝える)ではなく、自然な線音源(音源自体が線のあらゆるところにある)により、音を空間全体に浸透させることで、スピーカーに対してどの位置で聴こうが同じ音質になるという。実際、筆者も彼らのスピーカーの横、前、後、近く、遠くと違う場所に立って音楽を聞いたが、どの場所からも同質音のようだった。これに加え、従来のスピーカーでは活用されていない屈曲波を最大限かつ自然に活用する技術開発により、21世紀の音創りに取り組み、2024年のパリ五輪のレセプションで、その集大成の音をお披露目したいと意気込む。

 また彼らは、未来の地球を見つめ、環境に優しいモノづくりにこだわる。可能な限りリサイクル可能で身近に手に入る最低限の数の素材を使っているという。将来はできれば、ゴミ集積場に出向いて使える素材を集め、子どもたちの未来に向けたトーテムポールのようなスピーカーを創りたいという。