権威ある「手の賢さに捧げる賞」獲得で新たな開発ステージへ

 2年前の初のプロトタイプ完成後、スピーカーの常識を根本から覆す技術的なイノベーション、手作り、デザイン性、エシカル性にこだわった取り組みは、世間から注目されるようになった。

 昨年10月には、これがベタンクール・シュエーラー財団に認められ、優れた手工芸技術を駆使したクリエーターに与えられる「手の賢さに捧げる賞」にノミネートされた。そして約200件の応募案件の中から、見事にDialogue賞(対話賞)に輝いたのである。

 同財団は、生命科学、文化、社会変革の分野で優れた技術や活動を支援するため、約30年前に創設された。創設者は、世界最大の化粧品グループ・ロレアルの創業者の一人娘で、米経済誌フォーブスの2017年世界長者番付で女性1位の資産家でもあった、故リリアンヌ・ベタンクール氏だ。

 同賞受賞により名誉と支援金を得たVoxline社は、次の事業開発ステージに弾みをつけた。まず、IRCAM(フランス国立音響音楽研究所)及びLMS(エコール・ポリテクニークの材料メカニズムに関する研究所)の協力を取り付け研究開発体制が充実した。また、ジェロームの自宅以外の場所に専用アトリエも確保した。さらに、世界中のクラッシック音楽関係者に知られるビュッフェ・クランポン社が、同社のショールームへの展示を提案してきた。同社は1825年創立、1967年には日本にも進出するなど、世界中にアトリエ、ショールーム、販売網を持つ楽器制作会社だ。

日本とも深い関係

 彼らによると、AUDIOPHILE(オーディオ機器の音質を追求する人たち)は、世界中に存在しネットワークを通じ盛んに交流しているという。特に日本とフランス間の交流は歴史的に盛んだという。また、フランスにおける日本の存在と影響も大きい。例えば、ジェロームは、ジャン平賀氏(金田式アンプをフランスに普及させ、オーディオ技術の伝説的な雑誌を発行)はフランスのAUDIOPHILE界で教祖的な存在だという。またジョーンズは、近藤公康氏(オーディオ・ノート創業者、初めて銀素材を使った高級スピーカーを開発)を師と仰いでいるそうだ。

 近い将来、研究開発(例えば素材開発)、ファイナンス、マーケティングの各面で、日本の企業や研究機関との協力も大いに期待される。

 参考までに、同社の匠の作品は、10月16日から11月10日にパリのPalais de Tokyo(先端近代アートの博物館)で開催される特別展「L'esprit commence et finit au bout des doigts(指先から始めて終える精神)」で見ることができる。同展示会は、ベタンクール・シュエーラー財団が手工芸アート支援開始20周年を記念し、これまで賞の栄光に輝いた複数の作品展示も含め企画されたものだ。