2006年、首相時代の小泉純一郎氏小泉氏や中曽根氏など、長期政権を敷いた首相には、いくつかの共通する特徴がある。そして、安倍首相もそれらの特徴を持っている――そう田村氏は分析する Photo:JIJI

自民党政務調査会で16人もの首相に仕えてきた田村重信氏。首相たちの素顔を知り尽くした田村氏は、「安倍一強」が実現した背景には、いくつかの要因があると語る。(ジャーナリスト 横田由美子)

長期政権の首相は
前任者が不人気である

「安倍一強」という言葉がメディアに躍るようになってから久しい。事実、11月20日で、安倍晋三首相(第90、96、97、98代) は、桂太郎(第11、13、15代) の在職日数を抜き、憲政史上最長の在職日数を更新することになる。

「今はそういう認識はあまりないかもしれないけれど、安倍さんは間違いなく、後世に残る“大宰相”だ。私には、なぜだかわかるような気がします」

『秘録・自民党政務調査会 16人の総理に仕えた真実の告白』を出版した田村重信は、そう語る。現在は、自民党政務調査会嘱託を務める田村いわく、中曽根康弘(第71、72、73代)、小泉純一郎(第87、88、89代)、そして安倍には、大きく2つの共通点があるという。

 1つは、前任者の首相がさまざまな要因で、不人気だったことだという。

 中曽根の前の鈴木善幸(第70代)は、大平正芳(第68、69代)が大きく支持率を落とす中で急死したため、中継ぎ的に首相に就いた。小泉の前は森喜朗(第85、86代)で、森政権時代、内閣支持率が7.9%にまで凋落したことを覚えている人も少なくないだろう。

 そして、二度の政権交代を経て、2012年に第二次安倍政権がスタートする前は、悪名高き「民主党政権」。その政権運営のまずさで、驚くべきスピードで民意が離れた。

 そういう意味では、民主党政権発足当時の鳩山由起夫(第93代)も長期政権を敷ける土壌は持っていた。なにしろ、国民が自民党に見切りをつけていた頃で、前任の麻生太郎現副首相(第92代)は、衆参ねじれ国会の運営に四苦八苦していた。それだけではない。マスコミは「漢字が読めない」「庶民感覚が欠如したぜいたくぶり」など、麻生の首相としての資質に疑問符を突きつけていた。そして、自民党は衆院総選挙で大敗し、下野した後に、鳩山がさっそうと登場したのだから。