西川社長は今年5月、カルロス・ゴーン前会長時代に策定した中期経営計画「Nissan M.O.V.E. to 2022」を事実上撤回する発表をしている。Nissan M.O.V.E. to 2022は世界シェア8%、営業利益率8%を目指しながらほとんど未達成に終わった「日産パワー88」のリベンジといえる計画で、2022年に売上高16.5兆円、営業利益率8%達成をうたっていた。

 ゴーン流の拡大戦略の極みであったこの計画を取り下げたのは、「ゴーン氏の懐刀」として出世を果たしながらクーデターで追い落とした西川社長としては、「過去との決別」に等しいものといえるが、代わりに出した世界販売600万台、売上高14.5兆円、営業利益率6%という新目標からは、西川社長が今の日産の実力値を冷静に見ていることもうかがえる。

「販売台数が利益を作る」という
考え方からの脱却

 現代の自動車産業において、「数は力」という側面が強まっているのは確かだ。

 だが、自分の実力を過大評価し、できもしないことをやろうとしてコケるというのは、経営の失敗の黄金パターンだ。いくらルノー・日産・三菱自動車の3社連合を組んでいるからといって、そのために日産が「これ以上無理をさせられるのはごめん被る」というわけだ。

 今回の第1四半期決算発表では車種1割減、グローバルで従業員1万2500人削減、生産ラインのさらなる閉鎖といったラジカルな策が打ち出された。グローバル生産能力はすでにピークアウトして720万台にまで減っていたが、この合理化でさらに660万台まで減るという。「700万台、800万台は目指しません」という明確な意思表示といえる。

 台数だけではない。

 詳細については言及しなかったが、「台数を絞る対象」について、新興国向けの小型車がメインになることを示唆した。

 これも、日産の収益体質固めのカギは新興国市場攻略にあり、と考えていたゴーン氏のストラテジーとの決別といえる。ライン閉鎖の対象として、ゴーン氏が新興国攻略のための低価格ブランドとして復活させた「ダットサン」も縮小していくという。