最低賃金なぜ全国一律の最低賃金は望ましくないのでしょうか? Photo:PIXTA

全国一律の最低賃金を求める動きがあるようだ。自民党有志が議員連盟を発足させているし 、厚生労働省内でも最低賃金を全国一律にする案が検討されているとの報道もある。政治的なハードルが高そうなので、実現の可能性は低いと思われるが、もし実現したら地方経済への打撃は計り知れないものとなろう。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)

最低賃金は均衡賃金と一致すべき

 筆者は、最低賃金の引き上げが必要だと考えている。しかしそれは、最低賃金は高いほど良いと考えているからではない。「労働力不足を解消するには『最低賃金』を大胆に引き上げるべきだ」で記したように、均衡賃金以下で労働者を募集している雇い主が多いからである。

 最低賃金は、均衡賃金と等しいことが理想である。労働力の需要と供給が一致する価格(時給)で企業が労働者を募集すれば、失業も労働力不足も起きないからだ。

 最低賃金が均衡賃金より高ければ、失業が生じてしまうので、そうした事態はぜひ避けるべきであろう。最低賃金が均衡賃金より低い方が、労働力不足になるだけであるから、まだマシである。

都道府県別に最低賃金が違うのは
均衡賃金が異なるから

 大都市は生活費が高いので、高い時給を払わないと大都市で働きたい人が集まらない。また大都市は効率的に稼げるので、高い時給を払っても雇いたい企業が多い。つまり、均衡賃金が高いのである。

 一方で、地方は生活費が安いし、「地元を離れて大都市へ行くのは嫌だ」と考えている人も多いから、安い時給でも働きたい労働者が多い。また、効率的に稼ぐことが難しいので、高い時給を払っても人を雇いたい企業はあまりない。したがって、均衡賃金は安くなる。

 小売店や飲食店を考えても、人口密度の高い大都市の店舗と人口密度の低い地方では効率が違うので、同じ時給では地方店の採算が取れないのは明らかだろう。