あまりにうるさいので渋々乙社に連絡をすると、B社長は言った。

「仕事はいくらでも紹介できるよ。夏はすぐ草が生えるからね。何なら毎日でもどう?」

 Aの丁寧な仕事ぶりは顧客に好評で、指名まで入っているという。妻のしつこさとB社長の熱意に負けたAは、その後、毎週末バイトをするようになった。

 そんな8月上旬の日曜日のこと。腰をかがめて花壇の草取りをしていたAは、立ち上がった途端にバランスを崩し、花壇の端にある石につまずいて強く尻もちをついてしまった。

「あ、いたたた…」

 その場から立ち上がれなくなり、顧客が呼んでくれた救急車で病院に運ばれた。診察の結果、腰椎を骨折しており、1ヵ月ほど入院が必要であるとのことだった。

バイト先のケガで入院した場合
労災扱いになるのか

 翌朝、Aから連絡を受けたC部長は、夕方Aが入院している病院へ見舞いに行った。

「Aさん、大丈夫ですか?」
「ええ…、今痛み止めの注射を打ったので落ち着いています」

 AはC部長に、診断結果と1ヵ月ほど入院が必要なことを話した。そして治療費の件も相談した。

「今回の治療費ですが、病院にケガの原因を聞かれたため説明したところ、仕事上でのケガは労災扱いなので、健康保険が使えないというのです」
「そうですね。この場合、乙社の労災扱いになります」
「ところが昨日の夕方、見舞いに来たB社長に労災の話をしたところ、『ウチはAさんにお客を紹介しただけ。後は関知していないので労災扱いにはならない』と言われました」

 Aに付き添っていた妻が口をはさんだ。

「甲社から治療費を出してもらうことはできないのですか?」
「当社での業務が原因ではないので、残念ながら労災は使えません」

 返答を聞いた妻は、C部長に食ってかかった。

「健康保険は使えない、どっちの会社からも治療費が出ないということは、全部自腹ってことですか?」
「奥様、落ち着いて下さい。顧問の社労士に明日相談してみます。Aさん、乙社と交わした条件を詳しく教えてもらえますか?」