定年後を楽しめない
日本の男たち
サラリーマンをやっていて定年が近づいてくると、多くの会社では「ライフプランセミナー」という催しが開催される。名称は必ずしもこの通りではないかもしれないが、だいたい似たような内容のものだ。
定年にまつわる様々な手続き、退職金や年金の受け取り方法、退職後の健康保険や失業給付の申請等々、退職時にまつわる様々な手続きについての説明会が「ライフプランセミナー」と称して行われている。
そんなライフプランセミナーのカリキュラムの一つに「定年後の過ごし方」という講習が設けられていることもある。筆者も様々な企業に出かけてライフプランセミナーの講師をやる時に、定年後の働き方や趣味等の見つけ方などについて筆者自身や取材した方々の経験から、心得ておいた方がいいことについて話をする機会も多い。
ところがそういったセミナーに参加している人たち、中でも男性は、ほとんどが定年後の生活に対して自信なさげなのである。夫婦同伴でセミナーに参加するケースも多いのだが、そういう時は決まって女性の方が熱心で、定年退職後の生活プランを積極的に考えているのに対し、男性の方は大概、訪れる定年後というものに対して、今ひとつイメージがつかめていないようなのだ。
さらに言えば、実際に定年した後、活発に活動したり、様々なイベントに参加したりするのは圧倒的に女性が多いそうである。ある全国紙の記者と話していた時に、彼女は「なにかイベントを企画しても来るのは7割が女性。男性はみんな引きこもりがちになってしまうんですよ」と言っていたことを思い出す。一体どうしてそうなるのかが不思議だったのだが先日、ある女性の方々数人と会食をしていた時に出てきた話でその謎が解けた。
一緒に会食した彼女達の年齢はいずれも40~50代、職業は独立したファイナンシャル・プランナーであったり、会社員であったりと様々だったが、いずれの方々にも共通するのは結婚の経験があり、仕事も何度か変わったことがあるということだった。女性の間に混じってお話を聞かせてもらうと、我々男性とは違う発想を垣間見ることができ、とても面白いので、筆者は割とそういう機会が好きだ。
その時、ある1人の女性が言い放った言葉によって、それまでの疑問が氷解した。
それは「男の人って、アウェイになったことがないのよねえ。だからアウェイの立場になると、どうしていいかわからずに混乱してしまうのよ」という言葉であった。その場にいた他の女性もこれには大きくうなずき、さらに「そうそう、特に大企業にずっと勤めていた人ほど、まったくアウェイの経験がないのよね。だから困ったものなの」というコメントも出てきた。確かにそれはそのとおりである。筆者自身、定年まで一つの会社に勤めていた典型的なサラリーマンなので、退職したとたんにアウェイになるという感覚は非常によくわかる。