ボディーブローのように効いた
米関税政策の打撃

 「ヴァーレの回復により、8月に入って鉄鉱石価格は下落している」(JFE幹部)とはいえ、中国の鉄鉱石の在庫は低位にとどまっているといわれている。「中国政府の積極的過ぎるインフラ投資が終わらない限り、鉄鉱石は高価格にとどまる」(日本製鉄幹部)というのが大方の見方だ。

 主原料価格の上昇分は、必ずしも自動的に鋼材価格に上乗せできるわけではない。価格転嫁できるかどうかは顧客との交渉次第といった場合も多いだけに、鉄鋼メーカーは、利ざやの縮小を覚悟せざるを得ない状況に直面している。

 これが日本製鉄が震える「新たな形の中国リスク」の正体である。

 さらに、当初恐れたトランプ大統領の関税政策の影響も、ボディーブローのように効いてきている。中国はいわば“鉄の自給自足”を確立しているものの、ロシア産やトルコ産を中心とする鉄鋼製品が米国から締め出されてアジアに流出し、鋼材市況が低下傾向にあるのだ。

 ここに、新たに中国産の海外流出まで加わったが最後、市況の大混乱は避けられまい。中国には数年前も鉄の過剰生産を行って「鉄冷え」を引き起こした“前科”があり、業界関係者の間では懸念が深まるばかりだ。

 まさに出口の見えない事態に当たり、日本製鉄の社内はさすがに緊急事態モードに切り替わっているという。前出とは別の日本製鉄の幹部は、「旧新日本製鐵と旧住友金属工業との統合効果が出て安心してしまったが、生産設備の集約に手を付けなければならないときが来た」と言ってはばからない。

 新・チャイナリスクが端緒となり、これまで先送りにしてきた生産拠点の見直しにいよいよ着手することになりそうだ。