トランプ米大統領の強烈な米国第一主義の政策を前に、鉄鋼業界にそこはかとない不安が広がっている。
3月、トランプ大統領は、米国が輸入する日中などの鉄鋼製品に対する25%への関税引き上げを決行。さらに知的財産権の侵害を理由として、中国製品に対し幅広く高関税を課すことも決定した。
日本の鉄鋼メーカー関係者は、これら米国の輸入制限によって受ける直接的な影響は限定的だと口をそろえる。日本で生産する鋼材の輸出量のうち、米国向けは2%程度しかないからだ。
また、その2%の製品は、油田などに使われるパイプといった超高品質の製品だ。顧客が調達先を変えるのは難しく、課税分は価格に転嫁できるとみているのだ。
しかし、米国によるこの強行措置は、それほど楽観視できるものではない。というのも、見過ごせないレベルの間接的な影響が降り掛かってくる恐れがある。
「つらい『鉄冷え』が再来するのではないか」(鉄鋼業界関係者)。実は鉄鋼業界は過去数年にわたり、中国による大量の安値輸出を“諸悪の根源”とする市況の下落に苦しめられていた。