左派系大統領
文在寅氏の人となり

 韓国、文大統領は、生粋の左派系政治家といえる。文氏は弁護士として市民運動などに参画してきた。その上、同氏は故・盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領を側近として支えた。同氏の政策を考えるキーワードの一つに“積弊清算”がある。これは、長い間蓄積されてきた害・悪を清算するという考えを表している。

 過去との決別を重視する文氏は、朴前政権下での政治に不満を募らせる多くの民衆に支持された。2017年5月の大統領就任直後、文大統領の支持率は80%を超えた。文政権下の韓国では、故盧大統領への再評価もなされている。

“積弊清算”の対象は多岐にわたる。その中で一貫しているのが、対日強硬姿勢だ。政権内からは知日派の人材が追いやられた。文政権は、かつて日韓の政府が最終的に合意した国家間の協定を反故(ほご)にし、日本が求める協議にも応じる態度を見せることはなかった。さらに、日本の輸出管理手続きの変更に対抗して自国の安全保障の要であるGSOMIAの破棄にまで踏み込んでしまった。

 文政権は、国際社会の中で一線を越えてしまった。

 見方を変えれば、自国の安全保障を犠牲にしてまで対日強硬姿勢をとり続けなければならないほど、文大統領は追い込まれているということなのかもしれない。

 昨年後半以降、文氏の支持率は低下し始めた。その要因の一つに、最低賃金引き上げ公約の撤回がある。文政権は2018年に16.4%、2019年に10.9%と、韓国経済の実力を無視して最低賃金を大幅に引き上げ、雇用を減少させた。さらに、輸出の3割(含、香港)を占める中国経済の減速、世界的な半導体市況の悪化も加わり、韓国経済の先行き懸念が高まった。

 この結果、文政権は最低賃金引き上げの公約を撤回せざるを得なくなった。3月、米朝の首脳会談が物別れに終わったことも重なり、一時、大統領支持率は41%まで落ち込んだ。その後、文氏は、対韓輸出手続きを見直した日本への強硬姿勢を強めた。