7月20日、一家の住む木造アパートにエアコンが設置された。そして梅雨が明け、暑さが襲ってきた。しかし今年、Kちゃんは1回もけいれんを起こさなかった。そして父親のIさんに、「来年も大丈夫だね」と語ったという。Iさんは、「こんなことを10歳の子どもが言うんですよ」と嘆きながら、苦しむ我が子を見守ってきた親としての思いを次のように語る。

「今が、当然あるべき状態なんですよ。それを不思議がられているんです。でもこれまで毎年、子どもに同じ苦しみを与えてしまっていました……。10年間、子どもをそう過ごさせてしまいました」(Iさん)

 Iさんの声は、嗚咽で詰まっているように聞こえた。Iさんは足掛け3年にわたって、粘り強く福祉事務所と交渉した。また、専門職を含む協力者が多数、福祉事務所に働きかけを行った。そして今年のKちゃんは、けいれんと無縁の夏を過ごすことができたのだった。しかし、生活保護のもとで認められている社協の貸付を利用してエアコンを設置することができたIさんは、この地域では幸運な方なのだ。

福祉に尽力してきた夫妻を
待ち受けていた「社会の罠」

 Iさん一家と同じ地域に、この夏もエアコンのない住まいでしのいだ夫妻がいる。夫妻は長年にわたって、保育や福祉の仕事に就いてきた。しかし身体と心の健康を害して働けなくなり、10年前から生活保護で暮らしている。夫のGさん(61歳)は、「雨が続いて涼しかったところ、急に暑くなったので本当にキツかったです」と今夏を振り返る。

 Gさん自身は、上半身に何も着ないことで夜を凌ぎ、暑い夜も眠りにつくことができた。しかし、足が悪く動きにくい妻は、眠ることができなかったという。

Gさん夫妻が生活保護のもと、現在のアパートで暮らし始めたのは、10年前のことだった。住宅の断熱性能が考えられていなかった時期に建てられた、古い鉄筋コンクリート造りのアパートは、夏は暑く冬は寒い。