この中で日本については、根本的な姿勢を示す大きな決断を迫られているわけではないでしょう。日本が米国から離れて中国に付くことは、経済的にも安全保障上の同盟的にもあり得ません。日本の根本的なスタンスは基本的に決まっています。

――日本企業にとって中国は重要な国です。巨大な市場ですし、近年は優れた中国企業が出現し、ビジネス相手となっています。中国抜きとなると企業経営に打撃がある、と考える日本の経営者は少なくありません。

 本当にそうでしょうか? 確かにビジネスの変化という点では、中国が世界で一番激しく動いていることは事実です。そして中国はグローバル経済の中で非常に重要な存在でもあります。しかし米国と覇権を争って、産業分野で世界のフロンティア(最先端領域)に行く力があるかというと、現時点では考えにくい。

――なぜでしょうか。

 フロンティアに行くには、グローバル化が重要だからです。中国が産業的に先行する上での唯一の方法は、グローバルのプレーヤーの一人であり続けることなのです。

 米アップルのiPhoneを例に考えましょう。アップルはスマートフォンという製品のスマイルカーブのうち、まず上流のOS(基本ソフト)やアーキテクチャーの開発をやります。それから下流のブランディングやアップルストアでの販売をやって、その結果もうけています。半導体や液晶パネルのような重要なデバイスは、日本や韓国が作っています。

 一方、真ん中の組み立て部分、つまり本来の製造業の部分は他の部分よりもうからない。だからアップルではなく、台湾の企業が中国でやっているのです。この国際分業によって、アップルはフロンティアに専念できるのです。スマイルカーブの中にはもうかる部分ともうからない部分がある。もうからない部分を誰かにやってもらうことで、もうかる部分で稼ぐ人が現れる。これがグローバル化です。そしてこれまで中国が担ってきた「モノを作る国」という役割は、海外から見ればベトナムがやってもインドがやってもいい。そうなったら中国企業が今後も伸びていくには、どんどんグローバルな経済圏に出ていって、世界の企業と同じ土俵で国際企業として育つ必要がある。もし分断が起きたら、これは途端に厳しくなります。