しかし、VWの支配主義にスズキが反発、国際仲裁裁判所に持ち込むほどこじれて、2015年にようやく資本提携を解消するに至ったという苦い経験がある。GM提携、VW提携を主導してきた鈴木修会長は「支配されず、生き残る」ことが経営哲学だ。

鈴木修会長の負けん気と独特の経営勘は
余人をもって代えがたいのだが…

 筆者は、鈴木修会長とは1978年に社長に就任した頃からつきあいがあるが、その負けん気と独特の経営勘は余人をもって代えがたいものがある。

「どこかでトップになる」という執念は、インドやハンガリーに着目し、進出した結果であり、“ミスター軽”といわれるほど、日本独自のエントリーカーである軽自動車をここまで性能・品質ともに向上させた立役者なのだ。

 だが、鈴木修流によるスズキの経営もここへきて完成車検査問題での相次ぐリコールでダメージを受けた。これらは前期決算の減益要因となり、今年5月には不正問題を受けて鈴木修会長は1年間の無報酬を自ら申し出た。公の場に顔を出すことも控えていた鈴木修会長と筆者が久しぶりに会話できたのが全国軽自動車協会連合会(全軽自協)の総会パーティーの場だった。

「顔を出されなくなっているのに、珍しいですね」との筆者の問いに対して、鈴木会長は「全国の販売店の方々が来るこの場だけは、お願いして売ってもらうのだから顔を出さんとね」と答えた。

 先述したように、鈴木会長は来年1月には90歳を迎え、社長就任から40年が経過する。しかも、創立100周年と、2020年はスズキにとって、大きな区切りの年となる。そこで、スズキの持続的成長を願い、トヨタという後ろ盾を得て、“自動車大転換時代”を乗り切るという腹づもりなのだろう。今回の資本提携には「今度こそ(鈴木俊宏社長に)経営を任せる」というカリスマ経営者の決意を感じた。