アイルランドは通常でも法人税率が12.5%と低く、その税率でIT企業を中心とした多国籍企業を誘致することに成功しました。欧州での経済的勝ち組とされてきた国です。しかし低い税率の競争は「底辺への競争」を引き起こし、どこの国にも勝者がいなくなる恐れがあります。

 OECD(経済協力開発機構)は19年5月に「デジタル課税」として、法人実効税率に下限を設けるなどの作業計画を策定。6月に福岡で開催した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で計画を承認しました。7月に入るとフランスが、自国内でのデジタルサービスによる売上高が2500万ユーロ以上の企業に3%の課税をするという法案を上院で可決しています。これに対し米国は通商措置を講じると猛反発。税制において各国の足並みをそろえることの難しさがうかがえます。

 国家は巨大化したプラットフォーマーに対し、その支配的地位の乱用を防ぐために競争法を整備します。また収益に対して課税し、富の再分配をしようと試みます。しかし、デジタルテクノロジーは容易に物理的な国境を越えていきます。国際税務の原則は「PEなければ課税なし」。つまりビジネスを行う拠点のPE=恒久的施設がある国が課税を行うという原則です。ところがデジタルプラットフォーマーは物理的な拠点がなくても、自由に消費者にアクセスしビジネスをできてしまうのです。

 公益性と強行性を持った課税であっても、デジタルテクノロジーによってつくられたサイバー空間の富は、プラットフォーマーによって容易に実体のないペーパーカンパニーに移転されます。巨大化したデジタルプラットフォーマーに対し国家が競争政策でコントロールしようと試み、そしてその富を課税という形で国家が互いに奪い合う。それこそが現在のデジタルテクノロジー対国家のありように見えます。

(本稿は筆者の個人的見解であり、所属する組織・団体の公式見解ではないことをご了承ください)