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ヤフーが8月に始めようとしている新たな広告配信が波紋を広げている。川端達夫総務相が「通信の秘密」の侵害に当たるかどうか調査する考えを明らかにしたからである。
このサービスは、ウェブ上のメールサービスを利用している会員に対してメールの中身を機械的に解析し、関心の高い広告を配信するものである。「インタレストマッチ広告」といい、旅行に関するメールが多ければ旅行の広告がウェブ上に表示される。広告効果も高く、大きな収益源になり得るのだ。
このサービスについて、複数の専門家は「通信の秘密の侵害になり得る」という“クロ”に近い判定を下す。
そもそも、電気通信事業法は、電子メールの内容に通信の秘密の保護を義務付けている。違反した場合は刑事罰が科されるほど重いものである。
そこで重要なのは利用者の「同意」があるかどうかだ。ヤフーは会員に対して開始の2ヵ月前から同意を取り始めたが、「本来は個別のメール一つ一つに同意が必要となる」(法律専門家)。さらにいえば、「電話の逆探知が許されないのと同様に考えるならば、送信者の同意も必要になってしまう」(小向太郎・情報通信総合研究所主席研究員)という考え方もある。
だが、ヤフーがこれを「知らないわけがない」というのが業界関係者の一致した見方で、真の狙いは「グーグルへの宣戦布告」というのだ。
グーグルはすでに2004年からメールサービス「Gmail」を展開、同様の広告配信も行っている。なぜ許されるのかといえば、国内法の規制を受ける電気通信事業者として届け出をしていないからである。「メールサーバが国外にあると説明を受けた」(総務省関係者)と、国も容認のスタンスである。