高級ワインのオークション
オークションハウスをも欺いてフェイクワインで120億円を稼いだ男・ルディー。彼の手にかかった偽造ワインは、今なおアジアを中心に流通しているとみられる(写真はイメージです) Photo:Reuters/AFLO

2012年、米国のワイン愛好家たちをパニックに陥れたインドネシア人のルディー。驚くべき舌と知性を持った男は、愛好家たちはもちろん、オークションハウスをも華麗に欺き、ロマネコンティをはじめとする高級ワインの偽造品を次々と世に出した。(プレミアムワイン代表取締役 渡辺順子)

抜群の知性で魅了した
希代の詐欺師

 2002年ごろ、ワインオークションに毎回顔を出すアジア系の若者の姿が人目をひくようになった。名はルディー。30歳ほどの若さでありながら、仕立てのいい高級スーツに身を包み、次々とワインを落札していく。その豪快な買いっぷりとは裏腹に、寡黙な男だったルディーに対して、業界人はさまざまな想像をした。

「大富豪の息子らしい」
「宝くじで高額当選したのでは?」

 素性がどうであれ、ちゃんと購入してくれるし金払いもいいから、断る理由は何もない。当時、ワインの四大オークションハウス(クリスティーズ、サザビーズ、アッカー、ザッキーズ)が、ルディーを上顧客とみなすようになるまでに、さほど時間はかからなかった。

 オークションハウスは、上顧客に対して、次のオークションで販売するワインを振る舞い、味わいを確認してもらう「プレオークションディナー」を開催する。当時、クリスティーズに勤めていた私も、このディナー会で何度もルディーと食事を共にした。

 当時のルディーの印象は、とにかく「すごい人」。自分については多くを語らないが、ものすごく繊細な舌を持っていて、ワインについての表現が恐ろしく的確なのだ。そして、一度でも飲んだワインの味を、彼は決して忘れなかった。しかし、その稀有な才能を使って彼がしたことといえば、偽造ワインを次々と世に出し、愛好家たちから大金を巻き上げることだったのだ。