岡田 そうですね。しかも、アートの学校を卒業してから10年です。音楽などは5歳くらいからやっている人も多いわけですから、いわゆるビジョンができるまでには相当長い時間がかかるということだと思います。

佐宗 僕もそう思っています。ごく一部の天才は別ですが、創造的なアイデアというのは、自分の経験の引き出しが多いほど出てきやすくなります。20代のときは「アイデアを出せ」と言われると、それがとんでもなく難しいことに感じていたのですが、今の年齢になっていろんな分野の人と話をするようになってからは、自分の中にある概念の組み替えをすることでアイデアはかなり出しやすくなりました。爆発的に新しいものをつくるのではなく、組み替えていくようなクリエイティビティは、むしろ年齢を経たほうが高まってくるというのは肌感覚で感じますね。

最初から「差別化・らしさ」を追い求めなくてもいい

岡田 このことは、僕らにとってはちょっとした希望なんじゃないかと思いますね。若いアーティストのなかには「自分には創造性がない」といってすぐに辞めてしまう人もいますが、そもそも創造性などというものは20歳やそこらで獲得できるものではないのですから。単発での思いつきは若いときにもあるにしても、それを継続して展開させていく力は、ある程度の経験を積み重ねていくなかで身についていくのです。

20代で「自分が見つからない」と悩んでいるアーティストとかクリエイターには、「気にしないでいい」と言いたいですね(笑)。そのうちにいやでも見つかるんですから。

(第3回に続く)