京急脱線事故Photo:EPA/JIJI

9月5日午前11時40分頃、京急の脱線事故が起こった。1両目にいた乗客によると、2両目に続く通路が通れなかったため、傾いた側の下側の隙間から車外に避難したという。実はそこから見える教訓がある。(鉄道ジャーナリスト 渡部史絵)

 9月5日午前11時40分頃、京浜急行本線の神奈川新町第一踏切道で、立ち往生していた13トントラックに、下りの快特列車が衝突、脱線するという踏切障害事故が起きた。

 快特列車は神奈川新町駅には停車しないため、駅手前では恐らく100km/h以上(京急本線の最高速度は120km/h)の速度が出ていたと思われる。事故現場の踏切から上り方向(品川方面)は400mほど直線が続き、見通しが良い。

 にもかかわらず、衝突時は50km/h程度は出ていたのではないかと推測する。衝突したトラックは同踏切より約65m横浜方面まで引きずられて大破炎上し、運転手は亡くなっている。列車の乗客も30名以上が重軽傷を負った。

 また同列車は全8両のうち、前から3両目までが脱線、先頭車両にいたっては、右側に45度近く傾き、上り本線の運行にも支障をきたした。事故の原因は、トラックが踏切内で立ち往生し、京急の車両がトラックの荷台に衝突したことによる。現在、警察などが調査中ではあるが、軌道敷内に入らない限り、列車とトラックは衝突するわけがないことから、トラック側に過失があることは明白である。

 事故の報道をテレビなどで見ながら、同じタイミングで上り列車が走行していなかったことを私は不幸中の幸いだと思った。もし上り列車が通過していたら、被害は比べ物にならぬほど、甚大なものになっていたであろう。