候補地はビルやマンションの屋上や私有地になるが、「設備工事や人の出入りを敬遠するオーナーが多く、マンションの管理組合の場合は理事会の開催が半年に1度というケースもあり、なかなか交渉は進まない」(業界関係者)のが実態だという。

 そもそも都市部の候補地は、既存の携帯事業者であるNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが交渉済みで「空き」はほとんどないようだ。

 苦労して用地を確保しても、基地局と基幹通信設備(コア)を結ぶ光ファイバーを敷設する工事が第二のハードルだ。

 光ファイバーの工事は日本電信電話(NTT)の局舎を経由するため、受付はNTTになる。NTTの関連会社が工事を担当しており、業界関係者によると「接続設定やテストを含めたNTTの工事は半年かかることを覚悟しなければならない」とされる。

 第三のハードルとして、局舎や基地局側の電気工事も時間を要する。つまり、基地局を稼働するまでに、用地確保、光ファイバー、電気工事の三つのハードルを越えなければならない。そのために楽天はオーナー、NTT、電力会社との交渉が絡み合う膨大な作業を強いられる。

 この基地局整備の作業がいかに難しいかは歴史が証明している。

 ソフトバンクは05年に、基地局網を自ら建設して携帯事業に参入する計画を総務省に申請して認定を受けた。その直後、計画を放棄して旧ボーダフォン買収に切り替えた。当時を知る関係者は、「用地交渉があまりに大変だということが分かったので、既存キャリアの買収に切り替えた」と証言する。それほどまでにハードルが高かったのである。

 大手携帯会社のある技術者は「来年3月末までに楽天がまともな基地局網を整備するのは不可能だろう」と言い切る。

 これまでNTTドコモやソフトバンクは、楽天が打ち出す格安の料金プランを見てから対抗プランを出す姿勢を示していた。ところが楽天が事業を始めることすらできない様子から、「もはや恐れる相手ではない」(別の大手携帯幹部)との声も漏れている。

 大手3社は、警戒していた楽天の携帯参入が先送りとなったことで、関心を9月20日に発売となる新型iPhoneの販売の準備に移している。携帯大手3社による寡占の構図はまだまだ打ち崩すのは難しい。