この現象を見ると、「台風の後に出勤を強要する企業はブラックだ」というより、「台風の後に可能な限り早く出勤をしなければならないと考えている個人がとても多い」という方が、この現象を正しく言い表しているように思います。つまりこれは、日本人特有の考え方なのではないかと思うのです。

 これが、考え方が違う欧米人なら「台風が来た日はゆっくり家で過ごして、通勤ラッシュが落ち着いてから、そう14時くらいに職場につけばいいじゃないか。自然災害なんだから」と考えるでしょう。ところが日本人は、「暴風の圏外になった段階で、なるべく早く職場に到達する努力を始めなければならない」と考えてしまうのです。

 首都圏では何十万人ものサラリーマンが、大混雑している駅に押し寄せ、乗車率がいつもの倍以上となる列車になんとか乗り込み、辿り着いた駅でも長い行列をつくりながら改札を抜け、動いている路線の乗り継ぎも工夫するというように、いつもの数倍のエネルギーと時間をかけて、職場にたどり着いたのです。

結局、「出勤しなければ」と
考えるのは日本人の多数派

 企業は変わり始めていても個人の価値観が変わっていないのか、それとも「遅刻したのが自分だけだったときのペナルティが怖い」という個人の恐怖心によるものなのかはわかりません。しかし、「会社に向かわなければ」と思う人は、読者の皆さんがこの日のラッシュの凄さで体験した通り、世の中の「多数派」なのです。

 台風のときはインフラは止まるし、会社はそれに合わせて社員の働き方を考える。この数年でそうした「働き方改革」への考え方は、企業にかなり定着してきました。首都圏でいえば、東日本大震災以来、こと自然災害が起きた場合に無理をいう会社や上司の数は激減してきたはずです。それでも、台風通過直後に全力で職場を目指すのが日本人の平均像なのだ――。そんなことを今回の計画運休を通じて改めて感じさせられました。

 私は少し割り切れない気持ちですが、皆さんはどう感じるでしょうか。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)