一段と高まる
韓国の先行き懸念

 今後の韓国経済を考えると、政治の混乱が経済を圧迫し、さらに政治対立が激化するというような悪循環に向かいつつあるように見える。今後、韓国の経済成長率は低下し、所得環境は一段と悪化する可能性がある。その展開が現実のものとなれば、文氏を支持してきた人々も、徐々に政権批判に転じることも想定される。

 文氏は世論からの批判に対応するために、市民団体などにとって聞こえの良い主張を続けつつ、チョ氏の検察改革断行を支えるものとみられる。検察改革は市民団体などの求めに応じることに加え、大統領任期を終えた文氏が身の安全を確保するためにも重要だ。

 同時に、文大統領は増大する世論の不満が自らに向かわないよう、必死に国民の目線を海外などに向かせようとするだろう。その策の1つとして、対日強硬姿勢のさらなる鮮明化が考えられる。文政権を取り囲む状況が悪化すればするほど、韓国は一方的かつ身勝手な態度でわが国を批判する可能性がある。日本はそうした展開を念頭に、より多くの国際世論を味方につけなければならない。

 日本が、韓国に対して感情的に振る舞うことに利益はない。

 それは、韓国の反日感情を刺激し、日米韓の安全保障の連携にさらなるほころびをもたらす可能性がある。それよりも、わが国は韓国の社会心理に変化が表れる“機会”に目を向けたほうがいい。保守派や経済界に加え、従来は文氏を支持してきた大学生などからも政権批判が増えつつある。

 日本はそうした変化をとらえ、韓国との冷静かつ真剣な対話の糸口を探ればよい。その上で、わが国は、過去に日韓の政府が合意した最終的かつ不可逆的な合意が、国同士の信頼関係をつなぎ、強化する礎であるとの相互理解を目指すべきだ。

 文大統領の下、韓国はさらに険しい茨(いばら)の道を歩んでいるように見える。韓国の野党はチョ氏の強行任命を“史上最悪の人事”とまで非難している。朝鮮半島というセンシティブな場所に位置する韓国が、どのように政治と経済の落ち着きを目指すか、先行きはますます見通しづらくなった。

 他国のことながら、韓国のことが心配だ。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)