実は現地の世論調査では、郭氏への支持率は、韓氏よりも総じて高い。蔡氏にはまだ及ばないながらも、韓氏よりは現職との差を詰められている。こういった世論の感触を得ている郭氏は、国民による直接投票である総統選では自分は善戦できる、状況次第では当選の目もないわけではない、という自信がある。にもかかわらず、政治的な失言の続く韓氏が依然として党の公認であることに不満を持ち、「民心からかけ離れて利権を分け合い、腐敗しきっている」と激しく反発している。これが離党に至った理由だ。

次の総統は重大な
節目を担う宿命にある

 現在のところ、蔡氏への支持率は上昇傾向にあり、知名度では圧倒的な郭氏とはいえ勝ち目は少ない。そもそも郭氏の政策は「〓経済(〓の文字は手偏に并)」(経済政策を一生懸命やる)というあいまいな内容に終始しており、保育費の無償化などの案にも財源の手当てが示されていない。当人が「政治は素人」と認める通りである。

 だが選挙は水物。事前に勝利確実と言われた陣営ほど気が緩む傾向もある。さらに郭氏は、予備選の段階でも資力を尽くして大量の広告を投入し、テレビなどを使ったメディア戦略を大規模に展開している。このまま出馬に踏み切った場合には、「アジアのトランプ」が誕生する可能性はゼロではないのだ。

 そうなった暁には、中国・台湾の関係は従来から大きな転換期を迎えかねない。総統選翌年はちょうど、中国共産党設立(1921年7月)から100年の大きな区切り。この周年に、中国の悲願である両岸統一に向けて何かの試みがあってもおかしくはなく、この年に台湾のリーダーが誰であるのかは極めて重要だ。郭氏の離党宣言は、「海の向こうのドタバタ政治劇」と看過してはならない重大局面である。