郭台銘氏が総統選に出馬を表明
台湾国民党とはどんな政党か
4月17日、台湾鴻海(ホンハイ)精密工業の董事長(会長)を務める郭台銘(テリー・ゴウ)氏が、台湾の総統選挙に野党国民党から出馬することを発表した。鴻海と郭台銘氏と言えば、アップルのiPhoneの製造企業であると共にシャープの親会社としても知られている。
郭台銘氏は最近では「台湾のトランプ」と呼ばれることもあるらしいが、アメリカで実業家が大統領になるのと、台湾という特殊な地域のリーダーになることでは意味が大きく異なる。
私事であるが、先日、中国人向けのセミナーで「台湾総統」という言葉を使ったときに、聴衆の中から「台湾に総統はいない。台湾の指導者は総統ではない。中国は1つだ」と大声で反論されたことがある。台湾の総統選挙に出馬するということは、それくらい微妙なことなのだ。郭台銘氏と鴻海、そして日本のシャープにどのような影響があるのだろうか。
そもそも郭台銘氏は、有力候補になり得るのだろうか。郭台銘氏が外省人(中国本土出身の台湾人)の国民党支持者であることはこれまでも知られていたが、アメリカのトランプ氏と同じで実業家であっても政治の経験はない。台湾の政治は日本統治時代が終戦と共に終わると、長く国民党による一党支配が続いていたが、2000年に民進党が総統選に勝つと、それ以降は時折与野党が交代するといった、民進党と国民党による二大政党制になっている。
民進党と国民党の一番の政策の違いは両岸関係(中国と台湾の関係)であり、民進党は台湾独立の色が強く、国民党は1つの中国政策を堅持している点に違いがある。
民進党は本省人(長く台湾に居住している台湾人)の多い高雄、台南などの台湾南部で強く、国民党は外省人の多い台北などの北部で強いと一般的には言われているが、台湾の人々の考え方は明確に二分できるほど単純ではない。
台湾独立派にしても、台湾国としてすぐに独立国家を目指す強硬派から、現状維持に近い緩やかな独立まで様々だし、1つの中国を支持する勢力も、完全に中国との同化を目指す考えの人々から、香港のような一国二制度を支持する人々、より穏健な現状の枠組の中で中国との連携を強めていこうという現実派まで様々だ。