シャープシャープ復活の背景にあったものとは? Photo:JIJI

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。

買収から1年以内に
黒字化を実現したシャープ

 仕事で大企業の本社を訪問する際の楽しみの1つに、「展示コーナー」がある。たいていは創業時からの歴史年表や、貴重な品を含む歴代の製品がズラリと並べられている。用件の合間にそれらを拝見するのが、習わしとなっているのだ。

 ソニーでは、世界初のトランジスタラジオや、トリニトロンカラーテレビといった懐かしい製品と一緒に展示されていた、初期の電気炊飯器が目を引いた。木製のおひつの底に、アルミの電極が2つ貼ってあるだけのシンプルなものだ。

 説明の札を見ると、これは「失敗作第1号」とのこと。世界のソニーといえども、創業当初はいろいろな模索があったということだ。

 意外な展示品といえば、シャープが思い起こされる。

 20年以上前になるが、社名の由来となった製品が、それを製造していた工場の模型とともに本社に展示されていた。創業者の早川徳次が発明したシャープペンシル(早川式繰出鉛筆)である。

 創業時に、今とはまったく異なる製品を作っていたことに、とても驚いた記憶がある。

 さて、多くの人にとってのシャープに関する「驚き」といえば、2016年4月の、台湾企業・鴻海(ホンハイ)精密工業による買収劇だろう。主力の液晶事業の不振による債務超過が原因とされていた。

 ところが、さらに驚いたことに、鴻海傘下に入ったシャープは、2016年第3四半期(10-12月期)には、早々と「黒字化」を果たしたのだ。