良心的な薄利多売ビジネスに
改心して転換できるか?

 日本郵政グループのビジネスを「顧客の側」から見てみよう。

 まず、ネットが発達した今、ますます手紙は要らない。年賀状も不要だと考える人が増えている。

 物の運搬は必要なサービスだが、多くの場合、民間の運送業者で十分だ。例えば、集荷を頼む場合、日本郵便の「ゆうパック」よりも別の民間業者の方が柔軟に対応してくれる。運送業はあってもいいが、もっと競争力を高めるべきだろう。

 投信も、購入時に手数料が掛かるような商品の販売は不必要だ。現在窓口で扱っている投信を売るなら、永遠に販売自粛してもらっても投資家は困らない。一方、つみたてNISA(少額投資非課税制度)のような手数料の安い商品の積立投資のようなものなら投資家のためになるが(郵便局のつみたてNISA商品ラインナップは悪くない)、今のところ積極的に手掛けようとする動きが乏しい。

 かんぽ生命も、保険料の安い商品を売ってくれるなら、民間生保との競争の効果も期待できるので存在意義を認めてもいい、という程度の存在だ。

 いずれのビジネス分野も商品・サービスは成熟しており、同時に競合するプレーヤーが十分存在している。効率を高めて薄利多売するのでなければ、顧客から見た存在意義は乏しい。

 もちろん、法律も変えなければいけないし、経営構造を転換する過程では収益の悪化やリストラ等の費用が発生する。しかし、日本郵政グループの事業が持続可能でかつ社会的にも意義のあるものとなるためには、郵便・物流事業はユニバーサルサービスを捨てて効率を高め、民間運送会社と競争するべきだろうし、ゆうちょ銀行とかんぽ生命から成る金融事業は、「良心的な薄利多売」にビジネスモデル転換しつつ、適正な規模を探るべきだろう。

 過疎地に住む人に郵便物等を届ける必要があるなら、運送コストに対して政府か自治体が補助金を出せばいい。別の利用者や、まして金融サービスの顧客にコストを負担させるべきではない。

 なお、投資家の立場からは、コストの掛かる大リストラは政府が大株主である間にやってくれるとありがたい。十分改心して、経営の持続性と成長性が見えたときに安い株価で買えるなら、その時にこそ日本郵政グループ各社の株式を大いに買いたいものだ。

 政府には、財政のためになるべく高い株価で売り抜けたいなどといった卑しい根性を持たずにいてもらいたい。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)