製薬大手エーザイが他社と共同開発していた次世代アルツハイマー型認知症治療薬1剤の開発中止が決まった。両社で開発を進めていた同種3剤のうち2剤が今年に入って開発中止に陥った。「1剤でも上市できればピーク時売上高1兆円」と目され、株価けん引の材料となっていたが残りは1剤。いよいよ正念場を迎えた。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
今年3月以降で3剤のうち2剤までが開発中止に
「早期アルツハイマー病を対象とした臨床第3相試験の中止を決定したことをお知らせします」
製薬大手エーザイが米バイオ医薬大手バイオジェンと共同開発していた、アルツハイマー型認知症治療薬「エレンべセスタット」。開発最終段階での中止を知らせる13日のニュースリリースは実に淡々としたものだった。
エーザイは世界初のアルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」を1997年に発売。超大型製品に成長して好業績を叩き出し、エーザイの名を世界に知らしめた。だがアリセプトの特許が世界の主要マーケットで切れると、2010年以降は業績の低迷が続く。それでもエレンべセスタットといった根本治療を目指す次世代アルツハイマー治療薬の開発段階が上がってきた近年は、「エーザイの完全復活なるか」と注目が集まり、株価も上がってきたが、今春以降は厳しい局面が続く。
「現在客観的データを積み重ねている。8合目より上に来ている」。そう言って、創業家の内藤晴夫代表執行役CEO(最高経営責任者)が次世代アルツハイマー型認知症治療薬の開発に自信を示したのは今年3月7日。当時は、エレンべセスタットの他に、「アデュカヌマブ」「BAN2401」の計3剤を共同開発中で、「どれか1剤でも上市までたどり着ければ、ピーク時売上高1兆円」(あるアナリスト)と目されていた。