下川宏明東北大学教授
下川宏明東北大学教授(循環器内科学、2つの寄附講座)、循環器内科科長、東北大学医師会長、東北大学病院臨床研究推進センター長、東北大学ビッグデータメディシンセンター長(全学)。1979年九州大学医学部医学科卒業、85年より米国Mayo Clinic, Research Fellow、88年より米国Iowa University, Research Scientist。91年九州大学医学部附属病院助手、 92年同上講師、95年九州大学医学部助教授、 99年九州大学大学院医学研究院助教授を経て、2005年東北大学大学院医学系研究科教授に就任、現在に至る。 Photo by Hiromi Kihara

認知症の治療は非常に困難である。現在、承認されている認知症治療薬は、いずれも病気の進行を抑制する程度のものであり、劇的な回復が期待できるものではない。ところが、薬ではなく、思わぬ技術を用いた、新たな治療法が注目されている。それは東北大学の下川宏明教授率いるチームが研究を進めている“超音波”を使う治療法だ。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

検査だけではない
超音波のすごい力を利用

「認知症の特効薬はあと10年以内にできますよ」――。

 20年ほど前、世界的な研究者から教えられ、一日千秋の思いで待ちわびてきたが、今に至るまであらわれていない。薬で進んだのは、種類が増えて、「飲み薬が苦手な人は、貼り薬が使える」程度に選択肢が広がったことぐらいだろうか。

 実際、フランスは昨年8月、代表的な治療薬4種類を、「有用性が不十分」という理由で医療保険の適用から外してしまった。「進行を抑制する(遅れさせる)」という効果が分かりにくい割に、下痢やめまい、吐き気などの副作用が起きやすいことが理由だ。

 これら4種類の薬剤の日本での保険適用は継続されているが、患者やその家族、将来の発症の不安を抱えている方々にとっては「やっぱり、発症したら打つ手なし」と宣告されてしまったようで、がっくりするニュースだったのではないだろうか。

 ところが思わぬ技術を用いる、新たな治療法が注目されている。その開発を進めているのは、東北大学の下川宏明教授率いる研究チームだ。

 それは薬ではなく、“超音波”を使う治療法で、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の両方を治せる可能性があるという(認知症にはアルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型の4種類があり、アルツハイマー型が6割、脳血管性が2~3割で、患者の大半を占める)。