業務効率化で削減された分の時間は3等分すべきだ、と矢野氏は部下に指示する。

 3分の1は(1)「顧客をよく知る」ことに、次の3分の1は(2)「自己啓発」、残りの3分の1は(3)「ワークライフバランス」に費やせ、というのが矢野氏の指導だ。

 銀行の顧客には、あらゆる業種の企業と、さまざまな職種の個人がいる。そして、それぞれの商品やサービスのニーズも、実に多様化している。

 そういった需要に、あらかじめ用意された商品やサービスを当てはめるだけでは、個々の顧客が本当に満足することはできない。今や大手銀行であっても、個別にカスタマイズされたソリューションを提供できなければ生き残れない時代なのである。

 だから、これまでのように(1)顧客を理解するだけでは不十分。(2)自己啓発で幅広い知識やスキル、思考法を身に付けることで、各顧客に合ったサービスを提案できるようにしなくてはならない。

(3)ワークライフバランスについても、いわゆる「働き方改革」で効率よく働き、残業を減らせ、というだけではない。

 行員自身が健康を維持し、余暇を有効に使うことで、健全な心身状態で、顧客に向けた発想につながる引き出しを増やしていくことが求められているのだ。

上司は「ちょっとポンコツ」くらいが
ちょうどいい

 さらに矢野氏は、部下との接し方について、今は「これをやりなさい」と、上司が自らの経験値をもとに、上意下達で指示を出せばうまくいく時代ではないという。

 一人の経験値からではなく、すべての行員が分け隔てなくアイデアを出し合い、それらを広く組み合わせていかなければ、多様化する社会に対応することはできない。

 そのためには、昔ながらの率先垂範する指揮官ではなく「ちょっとポンコツ」ぐらいのリーダーが、ちょうどよいのだそうだ。

 矢野氏自身、「わからないから、みんな、良いアイデアないかい?」などと言って、広く意見を集めるのを心がけてきた。