東日本大震災のときは、原発事故から半年もたってからでさえ、ヨーロッパから日本に来る飛行機のパイロットが成田に着陸するのを嫌がって関西空港に降りたり、日本からヨーロッパに旅行した日本人が空港で止められて、全身を放射能検知器で調べられたという話を聞いた。

「東京直下型地震の次は富士山の噴火。この調子じゃ外国人はますます日本から遠ざかる。日本は自然災害だらけの最高に危険な国だって思われる」

「問題はサイバーテロもどきの手段に日本政府が何ら有効な手を打てなくて、アタフタしていることだ。きっぱり否定すればいいんだよ」

「それが出来ない時代と状況なんだよ。地震と噴火、いかにも起こりそうなことだ。観光業界は大変なことになってるぞ」

「いよいよ銀行の格付けも下げられるらしい。国の次は民間企業と言うわけだ。これが一般国民に広がると、必ず取り付け騒ぎが起きる。日本も完全に末期症状に突入というわけだ」

「日本国債の空売りがますます激しくなっている。すでに数兆円だ。いち企業の扱える額を超えているとも言ってるぞ」

 携帯電話で新聞記事を読んでいた、総務省から来た男が声を上げた。

「ユニバーサル・ファンドだろ。カントリー・デストロイヤー。CEOのジョン・ハンターは、国家の破壊者として有名だ。しかし確かに今回は、いち企業の域を超えてるな。勝負に出たのか、よほど有力な情報をつかんでいるかだ」

 中国がからんでいる。森嶋の口から出かかったが、なんとか呑み込んだ。自分の立場を考えるとうかつなことは言えない。ロバートの言葉が真実だとしたら、いずれ政府から何らかの対応があるだろう。

「富士山噴火のデマが広がると、首都移転の話はがぜん真実味を帯びるんじゃないのか。予定の数倍の早さで動き出すかも知れん」

「こんなこと話してる時間があったら、さっさと仕事をしろと言うことか」

 若い官僚たちは言うだけ言うと、自分たちのデスクに戻っていった。

 「昨夜、理沙さんと会ってたんでしょ。なにか新しい情報があったの」

 優美子が森嶋の横に来て小声で聞いた。

「ここで話しているようなことだ。雑談の域を出ない。財務省の方が新聞社なんかより情報量じゃ遥かに多いし正確だろ」

「嫌味を言わないでよ。絶対に何かある。私の電話にあなたが出ないと言うのは。また村津さんと一緒じゃなかったの。それともアメリカのお友達」

 優美子は執拗に聞いてくる。

 その時ドアが開いて、村津と遠山が入ってきた。

 昨夜の村津の話と態度から新しい発表があるかと思ったが、部屋中の視線の中をなにも言わず奥の部屋に入っていった。

 優美子は森嶋を見て肩をすくめたが、自分の席に戻っていった。