能作の「しない」経営方針
能作:そうですね。僕がやってきたのは、通常の経営者とは「真逆」のことです。
・能作は、「儲け」を優先しない……儲けではなく、「楽しむこと」を優先する
・能作は、社員教育をしない……教えるのではなく、自分で気づかせる
・能作は、営業活動をしない……営業する側ではなく、営業される側になる
・能作は、同業他社と戦わない……競争ではなく、共創(きょうそう)する
――信じられません。
これで本当に利益が出るのですか!
業績だけでなく、これだけの人が全国からやってくるのはすごいですね!
能作:みなさん、驚かれますが、僕が一番驚いています!(笑)
よく見学者の方々に訊かれますよ。
・新高岡駅から車で3000円強の片田舎に、なんで年間12万人が殺到するの?
・なんで平均年齢32歳の社員がイキイキ働き、全国から応募者が殺到するの?
・なんで従業員160人中80人が女性で、管理職の4割が女性なの?
・なんで工場見学者の約7割が女性なの?
こんなふうに。なんでなんでの連続です。
――それは訊くでしょう。驚きの連続ですから。
能作:本当に、僕自身が一番驚いているのです。
最近は特に、経営面での質問、「能作さんはどんな経営をされているのですか?」と訊かれることが多くなってきましたね。
――だから、今回の初めての本を出されるわけですね。
能作:はい。僕の初めての本『踊る町工場』には、能作の経営スタイルについて出し惜しみなく一冊に凝縮しました。
数々の能作の取り組みが、不景気にあえぐ中小企業の、伝統産業の、下請け業者の、さらにはビジネスパーソンの方々のヒントになれば、著者としてこれほど嬉しいことはありません! 富山の本社の雰囲気を少しでも知りたい方は、第1回連載もご覧いただけたらと思います。
――それは楽しみです!ありがとうございます。
1958年、福井県生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒。大手新聞社のカメラマンを経て1984年、能作入社。未知なる鋳物現場で18年働く。2002年、株式会社能作代表取締役社長に就任。世界初の「錫100%」の鋳物製造を開始。2017年、13億円の売上のときに16億円を投資し本社屋を新設。2019年、年間12万人の見学者を記録。社長就任時と比較し、社員15倍、見学者数300倍、売上10倍、8年連続10%成長を、営業部なし、社員教育なしで達成。地域と共存共栄しながら利益を上げ続ける仕組みが話題となり、『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)など各種メディアで話題となる。これまで見たことがない世界初の錫100%の「曲がる食器」など、能作ならではの斬新な商品群が、大手百貨店や各界のデザイナーなどからも高く評価される。第1回「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」審査委員会特別賞、第1回「三井ゴールデン匠賞」グランプリ、日本鋳造工学会 第1回Castings of the Yearなどを受賞。2016年、藍綬褒章受章。日本橋三越、パレスホテル東京、松屋銀座、コレド室町テラス、ジェイアール 名古屋タカシマヤ、阪急うめだ、大丸心斎橋、大丸神戸、福岡三越、博多阪急、マリエとやま、富山大和などに直営店(2019年9月現在)。1916年創業、従業員160名、国内13・海外3店舗(ニューヨーク、台湾、バンコク)。2019年9月、東京・日本橋に本社を除くと初の路面店(コレド室町テラス店、23坪)がオープン。新社屋は、日本サインデザイン大賞(経済産業大臣賞)、日本インテリアデザイナー協会AWARD大賞、Lighting Design Awards 2019 Workplace Project of the Year(イギリス)、DSA日本空間デザイン賞 銀賞(一般社団法人日本空間デザイン協会)、JCDデザインアワードBEST100(一般社団法人日本商環境デザイン協会)など数々のデザイン賞を受賞。デザイン業界からも注目を集めている。本書が初の著書。
【能作ホームページ】 www.nousaku.co.jp