1日100食限定の飲食店
その日の分を売ったら閉店
パソコンから顔をあげて、遠くをみつめてみる。そこにある景色は、2年後にはもうない。新しい社屋に移転するからだ。その頃は、働き方や価値観も変わっているのだろうか。でも…。その時、私の脳裏をシモーヌ・ヴェイユの言葉がよぎった。
「未来は、現在と同じ材料でできている」。だとしたら私は、「移転」というイベントを頼りにするのではなく、今この瞬間の小さな変化こそ大切にすべきなのかもしれない。未来は突然あらわれるのではなく、現在の延長線上にあるのだから。
さて、本書『売上を減らそう。』は、1日100食限定の飲食店を営んでいる経営者が思いの丈を綴った本だ。その日の分を売ったら閉店する、というモデル。そこから私は、大学で教科書として読んだ或る本のことを思い出した。
その本とは『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』である。私にとって、教科書はいつも冒頭部分の記憶が強い。飽き性なのである。この本には“当時のドイツ人はその日必要な分を稼いだら働くのをやめてしまう”という主旨のことが書かれていた。