2012年から始まった社会保障・税一体改革は、給付と負担の仕組みを見直すと同時に、消費税率を5%から10%へ引き上げ、増収分のうち4%分を「社会保障の安定化」(財源の確保等)に、残りの1%分を「社会保障の充実」に充てるという枠組みだった。

 だが、安倍政権は、税率10%への引き上げを2度延期し、税率8%から10%への引き上げによる増収分の一部を幼児・高等教育無償化等に充てる「使途変更」をしたうえで、今回ようやく税率10%の与野党合意を実現した。

 参院選を前に最終的に10%増税の実施を決めた19年7月、安倍首相は今後10年間くらいはさらなる消費増税の必要はないとの考えを示した。

 現在の経済政策を着実に進めることで税収が増加し、国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、以下PB)を25年度に黒字化させる財政健全化計画の目標を達成できると見込んでいるからだ。

財政試算の楽観的な想定
日本だけ生産性上昇率が加速?

 これは、内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(以下、中長期試算)の「成長実現ケース」が根拠となっているとみられる。

 成長実現ケースとは、安倍政権の政策効果が出て、20年代前半に実質2%、名目3%を上回る経済成長を実現し、CPI上昇率が2%程度で安定的に推移するシナリオだ。

 中長期試算では、中長期的な経済成長率が実質1%程度、名目1%台半ば程度、CPI上昇率が1%弱で推移する「ベースラインケース」も示されている。

 直近の中長期試算(19年7月31日に公表)によると、成長実現ケースのPBは26年度におおむね収支が均衡すると見込まれている。

 25年度ではGDP比▲0.4%と赤字のままだが、この財政見通しには、現在検討されている社会保障制度改革の効果が織り込まれていない。

 つまり、9月20日から議論をスタートさせた「全世代型社会保障改革」の取り組みを進めることで25年度のPB黒字化は可能ということだ。

 確かに成長実現ケースの達成が十分に見込めるのであれば、さらなる消費増税の必要性は当面は小さい。だが、以下の2つの理由から成長実現ケースの蓋然性は低いといわざるを得ない。

 1つ目は、しばしば指摘される中長期試算の経済前提に関することだ。直近の試算の成長実現ケースでは、中長期の経済成長力である潜在成長率が足元の1%程度から20年代半ばにかけて2%程度へ上昇すると見込まれている。